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カナダ当局、サイバー犯罪支援のクリプトマスに176億円の罰金科す

出典: Krebs on Security – https://krebsonsecurity.com/2025/10/canada-fines-cybercrime-friendly-cryptomus-176m/

原題: Canada Fines Cybercrime Friendly Cryptomus $176M

カナダ当局、サイバー犯罪支援のクリプトマスに176億円の罰金を科す

カナダの金融規制当局は、ロシアの暗号通貨取引所やサイバー犯罪サービスを支援したとして、デジタル決済プラットフォーム「クリプトマス(Cryptomus)」に対し、約1億7,600万ドル(約176億円)の罰金を科しました。本件はマネーロンダリング防止法違反に関わるもので、児童性的虐待資料の取引や詐欺、ランサムウェアの支払い、制裁回避に関連した疑わしい取引報告を怠ったことが問題視されています。

主要なポイント

  • 巨額の罰金措置:カナダ金融取引・報告分析センター(FINTRAC)は、クリプトマスの運営会社ゼルトックス・エンタープライズに対し、1億7,696万ドルの罰金を科しました。これはカナダ史上最大級のマネロン関連罰金です。
  • 疑わしい取引報告の不履行:クリプトマスは、児童性的虐待資料の取引や詐欺、ランサムウェア支払い、制裁回避に関連する資金洗浄の疑いがある取引について、疑わしい取引報告書(STR)を提出しませんでした。
  • サイバー犯罪サービスとの関係:ブロックチェーン調査員リチャード・サンダースの調査で、122のサイバー犯罪サービスがクリプトマスを利用しており、児童虐待に寛容なホスティングや匿名サービス、偽アカウント販売サイトなどが含まれていることが判明しました。
  • 影の住所登録問題:クリプトマスの登録住所は実際の拠点ではなく、多数の外国為替業者やMSB(マネーサービス事業者)が同一住所に法人登記されているものの、実態のない「影の住所」とされています。
  • 規制当局の課題:今回の罰金は大きな一歩ですが、他にもロシアやイラン拠点の資金洗浄フロントとみられるMSBが多数存在し、FINTRACにはさらなる取り締まりの課題が残っています。

技術的な詳細や背景情報

クリプトマスは暗号通貨を利用した決済プラットフォームであり、匿名性の高い取引を可能にしています。これにより、サイバー犯罪者は児童性的虐待資料の取引やランサムウェアの支払い、詐欺行為から得た資金を洗浄しやすくなっています。疑わしい取引報告書(STR)は、金融機関や決済事業者が不正資金の流れを監視し、当局に報告するための重要な手段ですが、クリプトマスはこれを怠りました。

また、ブロックチェーン分析により、複数のサイバー犯罪サービスがクリプトマスを介して資金移動を行っていることが明らかになっています。これらのサービスは匿名性を売りにしており、犯罪者が追跡を逃れるための「バレットプルーフ」ホスティングや匿名SMSサービス、偽アカウント販売など多岐にわたります。

さらに、クリプトマスの登録住所は実態のない法人登記のための「影の住所」とされ、実際にはマッサージクリニックやコワーキングスペースが入居する建物であり、登録企業の多くはその住所で事業活動を行っていません。このような住所の乱用は資金洗浄や違法活動の温床となっています。

影響や重要性

今回の罰金は、暗号通貨を悪用した資金洗浄やサイバー犯罪支援に対する規制強化の象徴的な事例です。児童性的虐待資料の取引やランサムウェア被害の拡大を防ぐため、金融当局が積極的に違反行為を摘発したことは、国際的なサイバー犯罪対策においても重要な前例となります。

一方で、専門家は罰金だけでは十分な抑止力にならず、クリプトマスのようなプラットフォームが事業運営コストとして罰金を受け入れてしまう可能性を指摘しています。また、影の住所問題や多数の影響力のあるマネーサービス事業者の存在は、今後も資金洗浄対策の大きな課題であることを示しています。

まとめ

カナダ当局によるクリプトマスへの巨額罰金は、暗号通貨を悪用したサイバー犯罪支援に対する強いメッセージとなりました。児童性的虐待資料の取引やランサムウェアの資金洗浄を許さない姿勢は評価される一方で、影の住所の乱用や多数の関連事業者の存在など、資金洗浄対策には依然として多くの課題が残っています。今後も規制当局と専門家が連携し、暗号通貨を悪用した犯罪に対抗していくことが求められます。

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