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サイバーセキュリティ企業が標的に、MFA回避を狙ったフィッシング被害の実例

出典: Sophos Security Operations – https://news.sophos.com/en-us/2025/09/22/what-happens-when-a-cybersecurity-company-gets-phished/

原題: What happens when a cybersecurity company gets phished?

サイバーセキュリティ企業を標的とした多要素認証(MFA)回避フィッシング被害の実例と教訓

サイバーセキュリティ企業であっても、巧妙なフィッシング攻撃により多要素認証(MFA)が回避されるリスクが現実に存在します。2025年3月、ソフォスのシニア社員がフィッシングメールに騙され認証情報を入力し、攻撃者がネットワーク侵入を試みた事例を通じて、現代の防御体制の重要性と課題を考察します。

主要なポイント

  • MFA回避攻撃の増加傾向: 多要素認証の普及に伴い、攻撃者はMFAを回避するためのフィッシング手法やツールを高度化させています。これにより、従来の認証強化策だけでは不十分になるケースが増えています。
  • 多層防御の重要性: メールセキュリティ、MFA、条件付きアクセス・ポリシー(CAP)、デバイス管理、アカウント制限など複数の防御層が連携し、一つの層が突破されても次の層が攻撃を防ぐ「ディフェンス・イン・デプス」の考え方が有効です。
  • 組織内の協力体制: セキュリティチーム、IT部門、インシデント対応チームが密接に連携し、リアルタイムで情報共有と対応を行うことが攻撃の早期検知・阻止に繋がりました。
  • セキュリティ文化の醸成: ミスを犯した社員を責めるのではなく、問題の早期報告を奨励する文化が被害拡大を防ぎ、組織全体のセキュリティ意識向上に寄与しています。
  • 継続的な改善と透明性: インシデント後の根本原因分析(RCA)を公開し、管理策の評価と改善を繰り返すことで、次の攻撃に備えた強固な防御体制を構築しています。

技術的な詳細や背景情報

多要素認証(MFA)は、ユーザー認証時に複数の証明要素(例:パスワード+スマートフォンのワンタイムコード)を要求し、不正アクセスを防ぐ技術です。しかし、フィッシング攻撃者は偽のログインページを用意し、ユーザーから認証情報を騙し取ることでMFAを回避する手法を進化させています。これにはリアルタイムで認証コードを中継する「MFAリレー攻撃」などが含まれます。

本事例では、メールセキュリティの突破、偽ログインページへの誘導、認証情報の入力という流れで攻撃が開始されましたが、条件付きアクセス・ポリシー(CAP)によるアクセス制御やデバイス管理、アカウント制限など複数の防御層が連携して攻撃を阻止しました。CAPはユーザーのアクセス元やデバイスの状態に応じてアクセスを制限する仕組みであり、これにより不審なアクセスをブロックできます。

影響や重要性

このインシデントは、サイバーセキュリティ企業であっても攻撃の標的となり得ること、そしてMFAが万能ではないことを示しています。攻撃者は防御策の進化に合わせて手口を変化させており、防御側も多層的かつ組織的な対応が不可欠です。

また、組織文化の重要性も浮き彫りになりました。ミスを恐れて報告を躊躇すると、被害が拡大する恐れがあります。透明性と協力を重視する文化が、迅速な対応と被害最小化に繋がります。

まとめ

今回のソフォスの事例は、多要素認証を回避しようとする高度なフィッシング攻撃に対して、多層防御と組織内の協力、そして健全なセキュリティ文化がいかに重要かを示しています。攻撃は成功しなかったものの、決して油断せず、継続的な分析と改善を行う姿勢が求められます。

今後はパスキー(パスワードに代わるより安全な認証技術)の普及促進や、セキュリティコミュニティとの連携強化が鍵となるでしょう。誰もが攻撃の標的になり得る現代において、組織全体で防御力を高める取り組みが不可欠です。

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