出典: Security NEXT – https://www.security-next.com/177455
JPCERT/CCがリアルタイムでマルウェア挙動を監視するOSS「YAMAGoya」を公開
JPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)は、マルウェアの挙動をリアルタイムで監視できるオープンソースソフトウェア「YAMAGoya」をGitHubで公開しました。ファイルレスマルウェアや難読化技術を用いた攻撃にも対応可能な新しい脅威ハンティングツールです。
主要なポイント
- ファイルレスマルウェア対応のリアルタイム監視:メモリやログの挙動を監視し、ファイルを介さないマルウェアの活動も検知可能です。
- 多層防御の一環としての利用:既存のマルウェア対策ソフトの代替ではなく、EDR(Endpoint Detection and Response)など他の監視ツールと併用して多層的な防御を実現します。
- WindowsのETWとメモリスキャンを活用:Windows標準のイベント監視機構「ETW(Event Tracing for Windows)」とメモリスキャン機能を組み合わせ、カーネルドライバー不要で軽量に動作します。
- 高度なルール対応:「YARAルール」によるメモリスキャン、「Sigmaルール」によるログ分析、さらに複数イベントを相関分析できる独自のYAMLルールにも対応しています。
- 操作性と連携性:GUIとコマンドラインの両方で操作可能で、自動化やスクリプト組み込み、SIEM(Security Information and Event Management)との連携も可能です。
技術的な詳細や背景情報
「YAMAGoya」はWindowsのETWを利用してシステムのイベントをリアルタイムに収集します。ETWはWindows OSが提供する高性能なイベントトレース機構で、プロセスの起動・終了、ネットワーク通信、レジストリ操作など多様なイベントを監視可能です。これに加え、メモリスキャン機能を用いて、ファイルレスマルウェアのようにディスク上に痕跡を残さない攻撃も検出します。
また、マルウェア検知に広く使われる「YARAルール」は、マルウェアの特徴的なパターンを記述するためのルールセットで、メモリ内の不審なコードを検出します。一方、「Sigmaルール」はログの分析に特化したルールフォーマットで、イベントログから攻撃の兆候を抽出します。さらに、複数のイベントを組み合わせて検知できる独自のYAMLルールにより、複雑な攻撃パターンの検出が可能です。
カーネルドライバーを必要としないため、システムへの負荷が抑えられ、管理者権限さえあれば導入が比較的容易です。システムトレイに常駐し、バックグラウンドでの監視を実現しています。
影響や重要性
近年、ファイルレスマルウェアや難読化技術を使った攻撃が増加しており、従来のシグネチャベースのアンチウイルスだけでは検知が困難になっています。こうした中で、「YAMAGoya」のようなリアルタイムで挙動を監視し、多角的に分析できるツールは、企業や組織のセキュリティ強化に大きく寄与します。
また、オープンソースとして公開されたことで、セキュリティコミュニティによるルールの共有や改良が期待でき、より迅速な脅威対応が可能となります。既存のEDRやSIEMと連携することで、多層防御の一翼を担い、サイバー攻撃の早期発見と被害軽減に貢献します。
まとめ
JPCERT/CCが公開した「YAMAGoya」は、Windows環境におけるマルウェアのリアルタイム挙動監視を実現するオープンソースツールです。ファイルレスマルウェアや難読化攻撃にも対応し、多様なルールセットによる高度な検知が可能です。既存のセキュリティ対策と組み合わせることで、多層的な防御体制を強化できる点が大きな特徴です。今後、コミュニティの活発な活用とルールの拡充により、より強力な脅威ハンティングツールとして成長が期待されます。


