原題: First Wap: A Surveillance Computer You’ve Never Heard Of
隠密追跡を可能にするSS7活用の監視コンピュータ「ファーストワップ」
近年、電話通信の古典的なプロトコル「シグナリングシステムNo.7(SS7)」を悪用した高度な監視技術が注目されています。ジャカルタを拠点とする監視機器メーカー「ファースト・ワップ」は、SS7を活用した独自の監視コンピュータ「アルタマイズ」を開発し、世界中で電話追跡ビジネスを拡大しています。
主要なポイント
- ファースト・ワップの概要:ヨーロッパ出身の創業者と経営陣がジャカルタを拠点に設立。輸出規制の緩い環境を利用し、監視機器の製造と販売を行っている。
 - アルタマイズの機能:単一または複数の容疑者のリアルタイム位置特定、移動パターンの検出、容疑者同士の近接検知を秘密裏に行う統合プラットフォーム。
 - 痕跡を残さない追跡:ペガサスのようなスパイウェアとは異なり、対象のスマートフォンに悪意あるリンクをクリックさせる必要がなく、端末の異常な動作も発生しない。
 - SS7プロトコルの悪用:電話会社が通話やテキストメッセージのルーティングに使うSS7にアクセスし、加入者の最寄りのセルタワー情報を取得。これにより電話番号から利用者の位置を特定可能。
 - グローバルな影響力:バチカン、中東、シリコンバレーなど多様な地域で利用され、国際的な電話追跡ネットワークを築いている。
 
技術的な詳細や背景情報
SS7(Signaling System No.7)は、電話網の制御信号を伝達するためのプロトコルであり、通話の接続やテキストメッセージの送受信に不可欠な役割を果たしています。通常、携帯電話会社や通信事業者のみがSS7ネットワークにアクセスできるため、一般ユーザーが直接利用することはできません。
しかし、SS7へのアクセス権を持つ者は、加入者の位置情報を問い合わせることが可能です。具体的には、電話番号を指定して、その番号が現在接続している最寄りの基地局(セルタワー)を特定できます。この情報を連続的に取得することで、対象者の移動経路や滞在場所を追跡できるのです。
ファースト・ワップの「アルタマイズ」は、このSS7の脆弱性を利用し、対象者のスマートフォンに一切の痕跡を残さずに位置情報を収集します。従来のスパイウェアのように端末の動作異常やバッテリー消耗を引き起こさないため、発見が極めて困難です。
影響や重要性
この技術の普及は、プライバシー保護の観点から大きな懸念を生じさせています。対象者が自覚しないまま位置情報が監視されることは、個人の自由や権利を侵害する可能性が高いです。また、輸出管理法の抜け穴を利用して監視機器が国際的に流通していることは、規制の強化や監視技術の透明性確保の必要性を示しています。
さらに、SS7の脆弱性は通信インフラの根幹に関わる問題であり、通信事業者や規制当局が早急に対策を講じることが求められています。これにより、悪意ある第三者による不正な位置情報取得や盗聴を防止し、通信の安全性を確保することが重要です。
まとめ
ファースト・ワップの「アルタマイズ」は、SS7の脆弱性を巧みに利用した高度な監視システムであり、対象者に痕跡を残さずリアルタイムで位置情報を追跡可能です。この技術はプライバシー侵害のリスクを高め、国際的な監視ビジネスの拡大を示しています。通信インフラの安全性を守るためには、SS7の脆弱性対策と監視技術の規制強化が急務であると言えるでしょう。


