原題: Canada Fines Cybercrime Friendly Cryptomus $176M
カナダ政府、サイバー犯罪支援のクリプトマスに176億円の罰金を科す
カナダの金融規制当局は、ロシアのサイバー犯罪関連サービスを支援したとして、デジタル決済プラットフォーム「クリプトマス(Cryptomus)」に対し、約176億円(1億7,600万ドル)の罰金を科しました。本記事では、この事件の背景や技術的な詳細、そしてその影響について解説します。
主要なポイント
- クリプトマスへの罰金:カナダ金融取引報告分析センター(FINTRAC)は、マネーロンダリング防止法違反としてクリプトマス運営会社ゼルトックス・エンタープライズに1億7,696万ドルの罰金を科した。
- 違反内容:児童性的虐待資料の取引、詐欺、ランサムウェア支払い、制裁回避に関わる資金洗浄の疑いのある取引について、疑わしい取引報告書(STR)を提出しなかった。
- 調査報告:ブロックチェーン調査員リチャード・サンダースの調査で、122のサイバー犯罪サービスがクリプトマスを利用し、56の暗号通貨取引所が資金処理に関与していることが判明。
- 影のマネーサービス事業者(MSB)の実態:カナダ国内の複数のMSBが実在しない住所に法人登記されており、実態はロシアやイランを拠点とする資金洗浄のフロントと見られる。
- 規制の遅れと課題:専門家は罰金だけでなく、起訴などの厳しい措置を求めており、規制強化の必要性を指摘している。
技術的な詳細や背景情報
クリプトマスは、ロシア語話者向けに設計されたデジタル決済プラットフォームで、匿名性を保ちながら暗号通貨の交換を可能にしていました。これにより、米国や西側諸国の制裁対象となっているロシアの大手銀行の口座を介して暗号通貨を現金化することができ、制裁回避に利用されていました。
調査により、児童性的虐待資料の取引を容認する「バレットプルーフ」ホスティングプロバイダーや、古いメールアカウントや金融アカウントを販売するサイト、匿名SMSサービスなど、多様なサイバー犯罪サービスがクリプトマスを通じて資金を流通させていることが明らかになりました。
疑わしい取引報告書(STR)は、金融機関やマネーサービス事業者が不正取引の疑いがある場合に規制当局へ報告する義務がある書類です。クリプトマスはこれを怠ったため、マネーロンダリング防止法に違反しました。
影響や重要性
今回の罰金はFINTRACにとって過去最大級のものであり、カナダの金融規制の強化を示す重要な事例です。しかし、調査を行った専門家は、罰金だけでは犯罪組織にとって「事業運営コスト」に過ぎず、実効的な抑止力にはならないと警鐘を鳴らしています。
また、カナダ国内で実態のない住所に多数のマネーサービス事業者が法人登記されている問題は、資金洗浄やサイバー犯罪の温床となっており、規制当局の監視強化が求められています。これらの問題は国際的な金融システムの健全性にも影響を及ぼすため、グローバルな連携も重要です。
まとめ
カナダ政府がクリプトマスに対して科した巨額の罰金は、サイバー犯罪支援に対する金融規制の強化を象徴しています。匿名性の高い暗号通貨を悪用した資金洗浄や制裁回避は、国際社会にとって重大な課題です。今後は罰金だけでなく、起訴やさらなる規制強化が必要であり、金融機関や規制当局の連携による包括的な対策が求められています。





