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米司法省、ジャバーゼウス開発者「MrICQ」ことウクライナ人を米国で拘束

出典: Krebs on Security – https://krebsonsecurity.com/2025/11/alleged-jabber-zeus-coder-mricq-in-u-s-custody/

原題: Alleged Jabber Zeus Coder ‘MrICQ’ in U.S. Custody

ウクライナ人マルウェア開発者「MrICQ」米国で拘束 ― ジャバーゼウス(Jabber Zeus)事件の全貌

米司法省は、銀行情報を狙った悪名高いマルウェア「ジャバーゼウス(Jabber Zeus)」の開発者として知られるウクライナ人、ユーリー・イゴレビッチ・リブツォフ(MrICQ)を米国内で拘束しました。本記事では、彼の役割やジャバーゼウスの技術的特徴、そしてこの事件の影響について詳しく解説します。

主要なポイント

  • MrICQの拘束と背景:2012年に起訴されたリブツォフは、イタリアで逮捕され、その後米国に引き渡されました。彼はジャバーゼウスグループの重要なメンバーであり、マルウェアの開発や資金洗浄に関与していました。
  • ジャバーゼウスのマルウェア特徴:このマルウェアはカスタム版のZeusトロイの木馬で、銀行のログイン情報を盗み、被害者が二要素認証のワンタイムパスコードを入力すると即座に通知を送信する仕組みを持っていました。
  • 「マン・イン・ザ・ブラウザ」攻撃の先駆け:ジャバーゼウスは、被害者のブラウザ内で入力データを密かに傍受・改ざんする高度な攻撃手法を用いていました。
  • 資金の流れとマネーミュールの利用:盗んだ資金は複数のマネーミュール(資金洗浄役)を介してウクライナや英国に送金されていました。
  • 関連するサイバー犯罪組織との繋がり:ジャバーゼウスのリーダーはマクシム・ヤクベツ(Aqua)で、彼は後に「Evil Corp」と呼ばれる大規模サイバー犯罪組織を率いていました。

技術的な詳細や背景情報

ジャバーゼウスの名前は、Zeusトロイの木馬のカスタム版に由来します。Zeusは銀行の認証情報を狙うマルウェアとして知られていますが、ジャバーゼウスはさらに高度な機能を備えていました。特に注目すべきは「Leprechaun」と呼ばれる機能で、これは被害者が銀行のウェブサイトに入力するワンタイムパスコードをリアルタイムで傍受し、攻撃者に通知を送る仕組みです。

この仕組みは、被害者のブラウザ上でHTMLコードを書き換えることで実現され、二要素認証を突破することが可能でした。これにより、当時最先端とされていたオンラインバンキングのセキュリティを容易に突破できたのです。

また、ジャバーゼウスは「マン・イン・ザ・ブラウザ(MitB)」攻撃の先駆けでもあり、被害者の入力情報を密かに傍受・改ざんすることで、被害者が気づかないうちに不正送金が行われました。さらに、攻撃者は被害者のPCを経由して銀行にアクセスし、IPアドレスやデバイス情報を偽装することで検知を回避していました。

影響や重要性

ジャバーゼウスグループの攻撃は主に中小企業を標的にし、数千万ドル規模の被害をもたらしました。被害企業は銀行と損害賠償を巡って法廷闘争を繰り広げるケースも多く、企業の財務に大きな打撃を与えました。

また、この事件はサイバー犯罪の手口が高度化・組織化していることを示す重要な事例です。特に、マルウェア開発者が国際的に逃亡しながらも逮捕され、司法の手が及ぶことは、サイバー犯罪対策における国際協力の重要性を浮き彫りにしています。

さらに、ジャバーゼウスのメンバーが後に「Evil Corp」というより大規模な犯罪組織を形成し、Dridexトロイの木馬を用いて数億ドルを窃取したことは、サイバー犯罪の進化と連鎖を示しています。

まとめ

ジャバーゼウス事件は、銀行認証情報を狙うマルウェアの進化と、それに伴うサイバー犯罪の組織化を象徴する重要なケースです。MrICQことユーリー・リブツォフの拘束は、長年にわたる国際的な捜査の成果であり、今後のサイバー犯罪対策においても大きな意義を持ちます。

私たち企業や個人も、二要素認証の導入だけでなく、ブラウザやシステムのセキュリティ対策を強化し、怪しいリンクやフィッシングサイトに注意を払うことが求められています。サイバー攻撃は日々進化しており、最新の情報と対策を常にアップデートしていくことが重要です。

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